このままでは建設業がダメになる
この危機感が岡本をエフライズ設立まで突き動かした原動力だ。
岡本は長年工事業に携わっているが、人口がどんどん減少し、多くの労働力を吸収してきた建設業もその影響を受けている。高齢化が進むと高所作業などの危険作業には大きな制限があり、必然的にできる人に仕事が集中してしまう。貢献意欲がある人ほど一生懸命になってしまい、その結果疲弊してしまい業界を離れてしまう。このような悪循環からどのように抜け出せば良いのかをずっと考えていた。
また、プラント工事というのは工場が稼働する上で必ず発生する。工場が稼働しないとお金を産まない。つまり経済成長にも直結する重要な事業なのだ。
しかし、重要な事業という割には、まだまだ「楽にする」という概念が少ない。「楽にする」というのが「サボっている」と捉えられてしまうのだ。
岡本はこう語る。
「楽にするというのは、次の課題を考えるために必要なこと」
さらに、工事には様々な工程があり、様々な専門家が動く。それ故、ある工程が遅れると全体が遅れてしまうことが多発し、結果的に長時間労働が常態化してしまいやすい。
これでは若い人が来るわけが無い。自分もいつまでも若いわけではない。岡本はそのような危機感を強くしていた。
また、岡本は建設業が発展し効率化を進めた結果「分業の悪いところが出ている」と指摘する。
分業というのは専門性を高めるために必要だ。しかし、同時に自分達の工程や技術に最適化してしまい、全体として整合性がとれないことも起きる。また「取り合い」といい各工程・各専門業者が工程の調整をした結果、後工程ほど遅延が発生しやすい構造があるとも指摘する。また、管理項目が膨大すぎて全体を把握することがどんどん難しくなり、いざトラブルが起きた場合にすぐに問題箇所を特定をして対応することが難しくなってきていた。
それを乗り切るためには「プロセス変革」と「テクノロジーの積極利用」が重要だと痛感したという。
まず取り組んだのが、プラントのユニット化とプレファブ化。以前から取り組んでいることもあるが、住宅建築ほどプラント設備は進んでいない。
現場での組立プロセスを可能な限り少なくし、材料管理コストの低減、工程の耐候性アップ(現場での組立は天候に左右されやすい)、組み立て精度の向上などを実現していった。そのプレファブ化とセットになるのが、自動溶接ロボットの開発。溶接ロボットは従前から使われていたが、配管溶接の世界ではまだまだ「人が現場で溶接をする」ということが多かったが、岡本はそれも積極的に取り組んでいった。
岡本の取り組みは止まらない。さらに取り組んだのは配管部品と図面とを統合するシステム。
これも「楽にすることの一つ」岡本はこう語る。
プラント配管というのは一つのユニットが多くの部材と配管で構成される。また、それぞれに図面があり膨大な管理工数が必要になる。また、ユニット製作時においてもどのパーツがあり、どのパーツが不足しているのか、今まではExcel表などでの管理が中心だった。
これを配管にレーザー刻印されるコードをカメラで読み取り、どの図面に相当するのかを一目瞭然にしたシステムをリリースした。
「まだこれはスタートでしかない。お客様の声と現場の声を入れてどんどんアップデートしていく。素早いアップデートはクラウドのいいところでもあるので」
建設業らしくない会社を作りたかった
この考えは2023年末に竣工した、「宮若.BASE」の設計思想にも現れている。
ものづくりは「きたない、くらい、せまい」では良いものはできあがらない。また、社員だけじゃなくて家族も呼びたくなるオフィスを作りたかった。
そう語ってオフィスを案内してくれた。確かにステレオタイプな建設業のイメージではない。
ここにもエフライズが目指している姿が体現されている。